2016年1月9日土曜日

『母と暮らせば』

井上ひさしさんが、ヒロシマがテーマの名作『父と暮せば』と対になる作品として、『母と暮せば』というタイトルで長崎を舞台にした作品を作りたいと生前おっしゃっていたそうで、終戦から70年の節目を迎えた今年、山田洋次監督が井上さんの遺志を継いで「どうしても遺したい」と作り上げたんだそうです。
長崎の原爆で息子を亡くした伸子という女性が主人公でその伸子を吉永小百合さんが演じています。そして、原爆で亡くなった彼女の息子役が嵐の二宮和也さんです。
伸子はだんなさをと長男を亡くして、二宮さん演じる次男のこうじと2人で暮らしていたんですが、こうじは医者になる為に医大に通っていて、授業中に原爆にあい、彼はそのまま亡くなってしまったんです。
伸子とこうじは、長崎に原爆が投下された朝、いってきます いってらっしゃい・・・といつものように別れてそのまま会う事ができなくなってしまったわけですが、原爆が投下されてから3年たった時、こうじが幽霊になって伸子のもとに現れて、その後もちょくちょく伸子のもとにやってくるようになるんです。
二人は、こうじがこの世にいなくなってからの時間を埋めるかのように、昔話などいろんな話をするんですが、そんな母と子の様子が優しく描かれています。

親子を演じた吉永さんと二宮さんのやりとりは、優しくて暖かくて
時には笑いもあってとてもほのぼのとしたものでした。
こうじが結婚するはずだった恋人の役として黒木華さんが出演されていますが、
黒木さんと吉永さんとの会話も、みていて心がほっこりするぐらいとても優しいんです。
でも、一方でこれは原爆で犠牲になった人達の話なので、一瞬にして何もかも奪ってしまう原爆の恐ろしさを随所に感じます。
原爆と聞くと、大勢の人の命を奪った恐ろしいもの、もう2度とくりかえしてはいけない・・と多くの人の頭をよぎるんだと思うけど、亡くなった1人1人に家族がいて、それぞれに家族の物語があるという事を大勢の人達に知ってもらうべく、
これからの日本を背負う子どもたちを含めてたくさんの人達に観てもらいたい作品です。